重粒子線治療の高度化
研究概要
重粒子線治療は最先端の放射線治療の1つで、亜光速まで加速した炭素の原子核を用いて治療を行います。 従来の放射線治療(X線治療)に比べて、患部への線量集中性が高く、副作用を低減できるとされています。 また、電離密度が高くなることから、放射線抵抗性の腫瘍に対しても高い効果が期待されます。 一方で、高線量が与えられる領域と腫瘍の位置と正確に合わせるための高度な技術や計算が必要になります。 また、患者の状態や体内構造は日々わずかに変化しますので、その対応も重要です。 我々は、より正確に腫瘍に重粒子線を当てるための照射方法を検討し、治療の高度化を目指しています。
キーポイント
- 高精度線量計算
- 治療計画最適化
- 臨床応用を意識した研究設計
代表的成果・論文例
医療機器におけるソフトエラー研究
研究概要
放射線治療は侵襲の少ないがん治療法であり、適応が広がっています。しかし、粒子線治療や高エネルギーX線治療では、治療中に中性子線が発生します。 中性子線が電子機器に当たると、ソフトエラーと呼ばれる誤作動を引き起こすことがあります。特にペースメーカーなどの植込み型心臓電気デバイス(CIEDs)での誤作動は非常に危険です。 そこで、我々は治療室内で使用できるソフトエラー測定器を開発し、放射線治療でのリスクの評価や、リスク低減方法の検討などを行っています。 特に重粒子線治療では、中性子線だけでなく、様々なフラグメント粒子もソフトエラーの発生に寄与するため、様々な照射条件がソフトエラーリスクを増減させます。 今後は医療機器を装着した方が放射線治療を必要とする機会も増加していくと予想されることから、より安全に治療を行うための方法を検討しています。
キーポイント
- 治療装置の3Dモデルや患者CTを用いた中性子輸送のシミュレーション計算
- 高エネルギー中性子の計測
- ソフトエラー測定装置の開発
代表的成果・論文例
医療用コンプトンカメラの開発
研究概要
コンプトンカメラは散乱体と吸収体と呼ばれる2種類の検出器を使用します。それぞれの検出器から得られる測定位置と吸収エネルギーの情報から、入射方向(散乱体での散乱角度)を算出することができます。 そのため、放射線のイメージング装置ではピンホールカメラやSPECTで用いられるような多孔コリメーターを用いたものが一般的です。 しかし、高エネルギーγ線を測定したい場合や、ノイズとして高エネルギーγ線が多い場合には、コリメーターを厚く重いものにする必要が出てきます。 そのため、持ち運んだり、狭い病室内に設置したりすることが難しくなり、放射線治療の現場には不向きです。 コンプトンカメラは大型で重厚なコリメーターを必要としないため、小型・軽量化が可能です。 我々はコンプトンカメラを「粒子線治療での飛程測定」や「BNCTの線量測定装置」に応用することを検討しています。
キーポイント
- 機械学習を用いたデータ選別(ノイズデータ除去)
- 画像再構成アルゴリズムの開発
- イメージング性能の評価